SESの闇はヤバいのか?やめとけと言われる理由とホントのところ

プログラミングあれこれ

今日はSESを中心に受託開発や自社開発の話をしたいと思います。

SESといえばIT業界では(特にツイッターやってる人?)とくに「闇」とか「悪」とされる傾向が強いのですが、僕はそうは思っていません。

確かに闇のやばい側面はあると思いますが‥

メリットもあるので何も考えずに闇だやめとけと言うのはよくないですよね。SESとはどういう働き方なのか、闇の部分やメリット・デメリットについてSE歴8年の私から見た情報を整理します。

ITにおけるSESとは?自社開発、受託開発の違いを比較

説明する女性

SES、受託開発、自社開発

システム開発の業界では主にこの3つの働き方があると思います。わたしは自社開発も受託開発もやったことがあります。

またSESで他社の社員を受け入れて一緒に仕事をしてたこともありますし、自社の同僚や後輩をお客さんの会社にSESで入れてたのも経験しています。

SESとは

SESというのは契約形態の名前です。System Engineering Serviceの略。

業務委託契約の一種です。必ずしも開発業務に対して使われるわけじゃなくて、サポート業務、調整業務、試験や調査業務などでもこの契約で頼むよ、なんてこともあります。

特徴としては「労働力、労働時間を提供する」ってことですね。

SESは時給

つまり時給です。1時間5000円とかでお客さんの会社で働く感じになります。1ヶ月160時間働けば80万円とか会社の売上になります。社員としてはそれだけ稼ぐけど、自分の手取りは会社からの月給なので20万円ぐらいになるのかな。

働く場所は客先

働く場所は客先です。「客先常駐」なんていう言葉も使います。朝起きて自宅を出たらそのまま客先に出社して個人認証して自分のデスクで働き始めます。なので周囲はお客さんだらけです。(SES専用の居室が用意されてる場合もある)

(自社で働く必要性があるときは、その旨を伝えて自社に行ったりは勿論あります)

派遣契約とは明確に違う

派遣契約と似てますが、派遣社員はお客さんの指示で働くのに対して、SESの指揮命令系統は自社にあるのでその点で違います。確かに派遣されていくわけですが派遣契約ではなく厳密に違うので、ここよく間違える人いるので注意です。

つまり顧客の指示で仕事をしちゃいけなくて、顧客→自社の上司→上司からの指示、で働くわけですね。そうしないと違法な偽装請負になります。

まぁ実際には顧客とよくコミュニケーション取れるポジションにいるわけだし、「これやってください」とか「あの資料作成してもらえますか」みたいな軽いのはよくある話。建前なんて言っちゃいけない😱あと自社の責任者も一緒にSESで常駐してる場合もありますね。

SESと自社開発、受託開発の比較

自社開発というのは自社でサービスや製品を開発して販売するような形態です。

受託開発というのはお客さんから開発してよ、と言われてモノを製造して納品するような契約形態です。ソフトウェア製造業務委託契約とか、ソフトウェア開発業務委託契約とか言われます。

ソフトやアプリを作って期限までに納品することで、その対価として報酬を得ます。製造したモノの品質に責任がありますので納品後に何かトラブルや不具合が発見されれば無償で対応する必要があります。(契約でどうなってるかによるけど)

よく炎上したりデスマーチと言われる案件はこのタイプが多い。顧客と納品物やその品質に対するすり合わせが上手くいってなかったり、顧客から追加の開発案件が来たり、納期間近になるとヒーヒー言う場合も。(;´・ω・)

SES 受託開発
顧客 いる いる
納品物 ない ある
報酬 労働に対する対価 モノに対する対価
瑕疵 ない ある
納期 ない ある
場所 客先 自社

比較するとこんな感じですね。

SESのある働き方をイメージで紹介

SESの働き方ですが、そもそもはシステムエンジニアリング業務委託契約書を読めばそこに自分の業務内容や範囲が明記されてるので、契約書を見ることは大事です。

例えばN社が自社サービスを企画して開発して一般ユーザーに提供することにした。しかし開発の技術屋がいないのでシステム開発会社のF社に発注することに。

N社には企画立案の社員とか、機能検討の社員とか、少し開発よりの社員とか、あがってきた製品の動作確認とか、関係各所の調整役の人とか、マーケティングの人とかがいます。とはいえN社にはそこまで人材が居ないのでN社の社員のように働いてくれる人がいたらいいなーなんて思ったりします。

そんなときにN社の中で社員のように働いてくれる人を外部から呼んだりします。こんなときにSES契約で優秀な人材を貸してくださいよ、となります。

SESの構造

SESで来た人はN社員の片腕のように開発にまつわるあれこれの業務をするでしょう。システム開発会社の調整や、見積依頼や、要件定義や、調査、試験などいろいろやることは考えられます。

そうするとシステム開発会社のF社の人がN社で打ち合わせがあって行くと、N社員だと思ってた人が実は外部からSESで来てた人だった、なんてこともあるわけです。

これは1つの働き方のイメージです。

別の例ですと

システム開発会社のK社では顧客のD社から受託した開発案件を自社でせっせと取り組んでいます。社内で製造していますがどうにも人材が足りない。そんなときはプログラマーをたくさんかかえているH社にSESで人材に来てもらおうとします。

H社も機能を分担して自分の会社内で担当機能を製造したいと思うこともあるでしょうが。

セキュリティもあるし、社内で密にコミュニケーションがとれるように、自社に来てほしいと思ったりします。それでH社から何人かをSESで来てもらって一緒に開発していきます。

SESの構造その2

こんな働き方のイメージもあります。

別の例ですと

WEBサービスを提供しているD社があります。D社は超大手なので高学歴の優秀な社員さんがたくさん。

WEBサービスは24時間365日提供しつづけなきゃいけない。止めてはいけないので監視と運用はしっかりやらないといけない。

けど、監視業務にたいせつな高学歴の社員を充てるわけにはいかないので。外部の若いエンジニアをSESで来てもらって、しっかり監視業務をやってもらう。。

データセンターとSES

こんな働き方のイメージもあります。

SESにもいい点がある!メリットとは

メリットを発表する女性

労働力を提供すればお金が貰える

SESの契約形態からすると労働力の提供をすればそれでお金が貰えるのがメリットといえます。つまり極端な話、成果物・納品物を求められていません

ソフトウェアの開発業務の作業員だったとしても、モノを作って納品するわけでもないし納期があるわけでもないのです。ソフトウェア開発の受託契約と比べて瑕疵の責任も無いし気が楽です。

とは言え一生懸命仕事をしてお客さんの役に立たないと契約切られちゃうと思うけど。

新人でも居ればお金が貰える

そういう意味では能力に関係なくお金が頂けるのもメリットです。エンジニア1年目のペーペーだったとしても客先で働けば時給が発生して会社に売り上げが立つので1年目から役に立てます。

よくあるのはSESで先に客先常駐してる先輩社員と抱き合わせで1年目とか未経験者を送り込むことです。最初の数か月はお金を頂かなくても先輩の指導のもとで業務をこなしていけば早く一人前になれますし、そうなれば今度は本当にお客さんからお金が取れるようになります。会社側としてもリスクが少ないのでこのパターンはよくあります。最初は手弁当だけど3ヶ月目からお金ちょーだい、みたいな。

社員10人をSESで時給5000円で送り込めば、160時間働いたら80万円×10人=800万円/月の売り上げが確実に立ちます。会社から見てもメリットです。

役職があがりやすい

役職が上がると時給が上がる可能性があります。ヒラ社員は時給5000円だったけど1級あがれば時給6000円、係長になれば時給1万円になることもあります。どういうことかというと会社としては社員のランクを上げて時給をもっと貰いたいのです。だからSESで客先常駐する人は出世しやすい、なんていう裏の事情もあります。

未経験でも採用されやすい

プログラミングスクールを卒業した業務未経験者がSESを嫌うんですけど、だったら1人前になってモノ作りできんのかって話で。未経験者はSES要因として採用した方がリスクが低いのです。これが受託開発で採用して使えない人材だとプロジェクトの足を引っ張るのでリスクが高いんですね。

だから未経験者の採用枠としてSESはお互いにメリットがあると思います。

あとは顧客側の人間として働くので、顧客の社名が入った名刺をもらって働くこともあります。システム開発の一部をSESで担当してたとすれば、その開発業務を外注してる場合もあります。そんなときは外注先の調整とか打ち合わせを顧客側の人間としてやるようなことも。(勘違いしてオレは偉いんだ、なんてならないように)

SESのデメリット、やばい点とは

SESのヤバさに気づいた社員

売上は固いけど利益は伸びにくい

デメリットは会社から見て、もらえるお金に上限が決まってることですね。時給5000円の10人が160時間で800万/月稼ぐのは前述のとおりです。しかし上限は800万で打ち止め。もっと稼ぐには残業するか、もっと人を入れるか、単価を高くしてもらうかです。残業したところであまり売り上げは増えないし、単価交渉や人材増はお客さん次第なのでこれ以上は稼げないかもしれない。

会社からの評価が高くならない

時給が上限ということは社員としての評価もそこどまりですよね。1人で稼げる金額が80万/月なのですから。どれだけ頑張ってもこれ以上の評価をもらうのは難しい。

何と比較されるかというと受託開発のケースです。受託開発(モノ作り売り)の契約の場合は1件5000万のシステムを3ヶ月で納品とかになります。そこにかける人件費も自由です。10人で3ヶ月かけて5000万の売上だったら、彼らの方が稼いだので会社の評価も高くなるでしょう?

モチベーションの維持に苦労する

あとデメリットと言えば常駐が長くなると、もはや自社のことなんて忘れてしまいかねません。自分の所属会社や同僚、上司と顔を合わすよりもお客さんと過ごす毎日が長くなるので。愛社精神も無いでしょうし。

SESはモチベーションを維持するのも難しい人もいるかもしれません。

SESの人が会社の評価を高める方法

先ほどSESの人は時給だから会社からの評価を得にくいとお話しました。では評価を得るためにどうすればよいかといえば「売上に貢献」することに他なりません。

・人材増の提案
・個別のシステム開発案件の受注

こんなところです。お客さんが毎日そばにいる利点を活かしてコミュニケーションを取り、課題や問題を解決できる方法を模索することですね。

「この前問題になってた〇〇の件、自社で検討してみたのですがシステムの導入で楽になるかもしれません。提案書を作らせてもらえませんか」みたいな。いわば営業活動です。

技術屋なのに営業活動というのはどうもしっくりこない人もいるかもしれませんが、そういうのをできる人が評価を得るに決まってるじゃないですか。

客先にいるということは「重要人物や権限者」、「受注の確度」、「予算感」もわかるしイイ提案書かけるんじゃないですか。

SESの闇とは?本当にやばいのはコレ

デメリットとは別で、SESの闇とは「多重構造」と「人貸し」ゆえにコキ使われる可能性です。

多重構造の闇

登場人物は次の3社です。顧客のN社、自社のA社、下請けのB社。

N社「人を3人貸してほしい。SESで。」

A社「ラジャ。とは言え自社には人材が居ないな‥下請けのB社に問い合わせてみよう。」

A社「Bさんのとこから3人ほど都合してもらえませんか?時給5000円のSES契約なんですけど」

B社「了解しました」

A社「じゃぁウチの社員を3人SESで送りますね。時給は8000円でおねしゃす」

N社「了解」

こんな具合。A社は3人の時給3000円をピンハネしてニッコリ。B社の社員は自分の時給以上で売られてることは理解してるけど、客のA社に文句言う訳にもいかないし。納得いかないけど仕方がないよね、てな具合。

N社も下請けから人が来てることは理解してる場合も多い。

今回は登場人物が3社だけど、B社が社員を都合できなければ、さらに下請けのC社、D社がある場合もあるでしょう。それぞれの会社がピンハネするので一番下の労働力を搾取されてるような構造になってるのが闇、という話。

一番上の客にしてみれば直取引で一番下と契約できればもっとも安く契約できたのに、という話も。

とはいえ一番上の客は大手だからいちいち個別の弱小企業の与信を調べたり個々の契約や管理なんかしてられない。1社(A社)と契約してA社が責任をもってたくさんの人材を管理してくれたら、それが楽。

多重構造は昔からあるけど。下請け側にも逆にメリットもあって。それは客に忠誠を誓う形で仕事が安定的に来る、ということ。仕事が切れるよりはマシかなと思えばそれも受け入れるでしょう。

人貸しゆえにコキ使われる可能性について

これはそのまま。立場の弱い労働者が顧客の職場で働くわけなので言われれば作業せざるを得ません。残業してと言われたら断りにくいでしょう。顧客の指示で動くことは派遣契約になるので、偽装請負が行われることもしばしば。これは違法なので本気でヤバいでしょう。

働き方改革と指揮命令系統がしっかり見直されればこの問題は減りそうですが。実態はその会社によるのかもしれません。

SESはやめとけ、なのか?

上司の男性と女性

で、最終的にどうなのか。よくTwitterを見てるとSES会社はやめとけ、と言われることが多いように思います。

けど僕は必ずしもそうは思いません

先に書きました通りデメリットもあるし闇の部分もあるけど、メリットだってあるのですから。

特に業界未経験でITエンジニアになりたいと思ってるならSESのほうが採用のハードルが低い。

このブログにも次のような問い合わせをいただくことがあります。「自社開発の求人を紹介してもらえない」「紹介できる案件がないと言われる」って。

IT人材不足で売り手市場と言われてますが、それは経験者の話。未経験者はまずそこを自覚する必要があるのでSESはやめとけ、とは簡単には言えません

2~3年でもSESの経験があればその次はいよいよ中堅どころとして転職する道が見えてくるはずです。(自社開発や受託開発の案件で採用されたらラッキーです。)

私の先輩がSESの会社を経営しています。60人ぐらい社員がいるそうですが残業はほとんど無いって。社長みずから顧客に話をしていてワークライフバランスを取ってるそうです。

ほら、SESも悪くはないでしょう?

ちなみに私はSESのまわしものじゃないですよ😎

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