法人保険って、少し前までは「節税になるらしい」とかなり強めに語られることが多かったんですが、2026年3月8日時点ではその理解はかなり危ないです。
というのも、法人向け生命保険の税務は昔のイメージのまま語れなくなっていて、特に2019年7月8日以後の契約では、損金算入の扱いが保険の種類や解約返戻率でかなり変わります。なので「法人保険に入れば節税になる」で止めると危ないのよね。
結論: 法人保険は「自動で節税」ではない
まず結論を書くとこうです。
- 法人保険は今でも活用余地はある
- ただし、何でも全額損金という時代ではない
- 契約時期、保険種類、受取人、解約返戻率で扱いが変わる
- 節税目的だけで入ると失敗しやすい
国税庁でも、定期保険や第三分野保険、定期付養老保険などで取扱いを分けて案内しています。要するに、「商品名」ではなく「中身」で判定されるということです。
なぜ昔と話が変わったのか
大きいのは、解約返戻率が高い保険を使った節税スキームが広がったあとで、税務上の取扱いが見直されたことです。
今は、最高解約返戻率が高いタイプの定期保険や第三分野保険では、払込保険料の一部を資産計上しなければならないケースがあります。つまり、支払った保険料をそのまま全部損金に落とせるとは限りません。
ここを知らずに「前に聞いた節税保険の話」で判断すると、だいぶズレます。
2026年時点で見ておくポイント
1. 契約日がいつか
税務の区切りとしてよく出てくるのが2019年7月8日です。この日以後の契約なのか、それ以前なのかで参照すべき取扱いが変わります。
2. 保険の種類は何か
ざっくりでも次の違いは見ておいたほうがよいです。
- 定期保険
- 第三分野保険
- 定期付養老保険
- 養老保険
同じ「法人保険」と呼ばれていても、税務上の扱いは同じではありません。
3. 保険金の受取人が誰か
法人が受け取るのか、被保険者や遺族が受け取るのかでも扱いが変わります。福利厚生なのか、退職金準備なのか、万一の資金確保なのかで設計が変わるので、ここも重要です。
4. 解約返戻率がどれくらいか
特に返戻率が高い商品は要注意です。返戻率が高いということは、あとで戻るお金が大きい一方で、会計・税務上はその分すんなり損金にしにくい、という考え方が入ってきます。
「節税になる」のではなく「課税のタイミングを動かす」に近い
ここも大事です。法人保険は、ケースによってはその期の利益圧縮に見えることがありますが、実態としては課税を永久になくすというより、タイミングをずらす性格が強いです。
解約返戻金を受け取る時、保険金を受け取る時、役員退職金と組み合わせる時など、出口で課税や資金計画を考えないと意味がありません。
なので「今期だけ利益を落としたい」だけで入ると、数年後にしんどくなることもあります。
法人保険を使う意味があるケース
節税という言葉はいったん横に置くとして、法人保険を検討する意味があるのは例えばこんな場面です。
- 経営者やキーパーソンの万一に備える
- 退職金原資を計画的に準備したい
- 資金繰りのバッファを持ちたい
- 福利厚生として一定の役割を持たせたい
このあたりの本来目的がはっきりしているなら検討価値はあります。でも、目的が「節税したい」だけだと、だいぶ弱いです。
逆に危ないパターン
- 税理士確認なしで営業トークだけで決める
- 出口戦略を考えずに返戻率だけで選ぶ
- 今のキャッシュを減らしてまで入る
- 会社の規模や利益水準に対して保険料が重すぎる
保険は毎年払うものなので、キャッシュが細い会社だと普通に負担です。利益が出ている年だけ気持ちよくても、翌年以降が苦しくなると本末転倒なんですよね。
2026年時点の私の結論
法人保険は、今でも使い道はあります。ただし、昔みたいに「入っとけば節税」という雑な理解では見ない方がいいです。
今は税務ルールが細かく整理されているので、契約日、商品設計、返戻率、受取人、出口まで含めて判断しないと危ない。つまり、節税商品というより資金計画と保障設計の道具として見る方がしっくりきます。
最終判断は、保険会社の提案だけで決めずに、税理士と一緒に「その会社に本当に必要か」を見た方が安全です。
てことで以上です。
この記事は法人保険への加入で節税できるのか、どれぐらいお得なのか、メリットやデメリットについて確認しています。
私が実際に保険屋さんから提案を受けたので、本当にお得なのかなーと思って自分で計算したりシミュレーションしたりしました。
保険屋さんの提案書には「社長が退職する」「会社の調子が悪くて赤字になる」といった起こりうる将来についての想定が無いので、そういったシミュレーションは自分でやっています。
その結果、自分の計算ではあまりお得感が無いという結論になりそうです。もしプロの方が見て誤ってると思われるところがあればご指摘いただきたいです。
法人保険について想定しているケース
特に以下のようなケースを想定しています。
・社長1人の法人、従業員は家族だけ、または雇用していない
・社長が会社を退職したら会社も清算する
・ニッセイの長期定期保険(スーパーフェニックス)
・死亡時に2億円の保険金が出るプラン
・社長40歳からスタート
・期末(決算月)に年払いの保険に加入、今年の損金にする
・会社の利益は毎年1000万円出る想定
・毎年の掛け金は400万円で、損金扱いは1/2
・法人税は30%で計算
5年後に退職金を受け取って会社を清算する
保険に入らない場合

保険に入らない場合は毎年利益1000万に対して30%の税率をかけると300万の法人税が取られていくイメージです。
それと同時に会社の内部留保は毎年700万が残るので、5年目の期末には3500万が会社に残ります。
そして6年目の期末(決済月)に社長が退職して退職金を貰います。退職金は内部留保の3500万とその年の利益1000万を足して4500万となります。
また法人の利益は0になるのでこの年は法人税0円です。
保険に入った場合

毎年の掛け金は400万円です。利益1000万円-400万÷2=800万円に対して法人税がかかるので、800万×30%=240万円が税金です。
なので1000万-400万-240万=360万円が会社の内部留保です。
これを5年間続けて、6年目の期末になると保険が満5年を迎えるので、手元の資料によると満5年の返戻率は82.2%(配当金含む返戻率は84.5%)です。
5年間払い込んだ保険料は400万×5=2000万円。
これの82.2%なので1644万円が返戻金となります。
このタイミングで社長が退職して以下の退職金をもらいます。
・内部留保の1800万円
・返戻金の1644万円
・6期目の利益1000万円
合計すると1800+1644+1000=4444万円。
また法人の利益は0になるのでこの年は法人税0円です。
◆比較すると保険に入った方が手元に残るお金が4500-4444=56万円の損ということになります。
とはいえ保険に入ってる期間は死亡したら2億円が出るので単純に損というわけではありませんけど。
売上がずっと安定してるならいいと思うんですけど、会社が赤字になっちゃったり利益が出なかったときにも保険料400万円は払い続けないといけないのはツライと思うんですよね。
業種にもよるけどフリーのエンジニアとか仕事が無くなったら無収入ですのでなかなか保険に入ろうというのは難しいなと思いました。
だったら個人のほうで2億円なり1億円の掛け捨て生命保険(月5万とか3万とか)に入った方がいい気がしました。
スーパーフェニックスの場合、返戻率が一番高くなるのは11年後の84.6%でそれ以降は下がっちゃいます。配当金を含む返戻率だと40年後の106.6%まで上がり続けます。何歳まで会社をやるんだという話もあると思うのでこの手の保険はエンド(退職の年)を決めてかからないといけないですね。
それに配当金は確実に貰えるものではなく(高確率で貰えるものだが)これはおまけ程度に計算しておこうと思います。
10年後に退職金を受け取って会社を清算する
保険に入らない場合
5年パターンと同じです。
毎年700万円を内部留保で、毎年300万円の税金を10年間。
11期目末の社長の退職金は8000万円になります。
11期は利益0のため税金は0ですね。
保険に入った場合
ニッセイのスーパーフェニックス解約時の返戻率がピークを迎えるのは10年後の84.6%のようです。20年後は84%ですし30年後は82.2%となっています。
さてこちらで保険に入った場合のシミュレーションをしてみました。
満10年の返戻率は84.6%なので10年間400万円をかけていって4000万円になった保険料は、3384万円の返戻金で戻ってきます。これを退職金に充てます。
また内部留保3600万と11年目の利益1000万も退職金にするので、合計すると3600万+1000万+3384万=7984万円です。
やはり保険に入らない方が手元に残るお金が若干多いです。もちろん支払う税金は安くなっていますけど保険にかけたお金がそのまま100%戻ってこないのでこのようになっちゃいますね。
支払税金だけみると3000万と2400万の差ですから600万も節税できています‥が、駄目っ!
手元に残る金は8000万と7984万ですからわずかに16万円近く損しますよね。
ちなみに配当金を含む返戻率は89.4%なので、これだと4000万×0.894=3576万で。3600+1000+3576=8176万となり176万円もプラスになります!
配当金があると信じたいですね。
返戻率と実質返戻率の計算方法をおさらい
◆返戻率は次の計算式です。
解約返戻率 = 返戻金÷累計保険料
上の例だと3384万÷4000万円で84.6%になる感じですね。
◆よく「実質返戻率」とか「参考返戻率」と呼ばれる数字がありますがこれは次の計算式です。
解約返戻金÷(累計保険料‐(損金算入額累計×法人税等実効税率))
つまり保険料の支払いによって毎年安くなてっる税金はお得になった部分なので、その部分は払ってる累計保険料から引きましょうね。そのうえで返戻率を求めましょうという考え方のようです。
上の例だと
3384/(4000-(4000/2)*0.3)=99.5%です。
法人税等実効税率は30%で計算していますので、ご自身のケースに当てはめて変える必要があります。ニッセイの提案資料を見ると33.6%で計算しているので平均的にはこのパーセンテージを使うのが良いのかも。(でも私の今年は約28%でしたけど)
試しに法人税率33.6%でやると。
3384/(4000-(4000/2)*0.336)=101.68%
です。
なので10年目の解約時には法人税33.6%だったら実質返戻率を見るとお得になってると言えるわけです。
来年から法人税率が上がるようですし、上がったり下がったりするのでこの率は便宜上は常に一定ということで計算していますし、ニッセイのサンプルでも常に一定で計算していました。
赤字の年に保険を解約してみる
会社を運営していると常に調子の良い年ばかりではありません。売上が立たないとか設備投資を増やしたとかで赤字の年もあるかもしれないですね。
保険に入らない場合
一応記載。

4年目で赤字1000万円を出したとするとこの年は法人税0円なので、支払税金は3年間で900万円です。
保険に入ってた場合
保険を解約すると今まで支払った保険金をパーセンテージでもらえます。保険金は会社にとって収入なので法人税を払わないといけません。
シミュレーションをいくつか。

これは毎年1000万円の利益が出てると想定している会社です。さっきと同じように毎年400万円の保険料を支払う契約です。
会社の利益から減らした保険料400万円の2分の1である200万円は損金扱いなので、1000万から200万円を引いた800万円に法人税(30%)がかかります。
800*0.3=240万円が税金です。するとのこりの360万円が内部留保ですね。
3年目の決算までは1000万円の利益を出していていて、4年目は利益0円とすると。このタイミングで保険を解約しました。
解約保険金が994万円で、それに対して30%だから283万円の税金です。
毎年の保険料の2分の1に対して30%しか節税できてなかったのに、保険金を貰うとそれの満額に対して30%の法人税ということになるので、このやり方は多く税金を払ってしまう結果になるのでダメですね。
それならば会社が赤字の年に保険を解約すれば(うまく赤字と受け取り保険金と相殺してプラマイ0に着地するかは難しいと思いますが)会社に利益が出なければ法人税を払わなくていいから得でしょ、というのがよく税理士さんに言われる考え方です。
それが以下の図になるはずです。

3年目の決算までは順調に1000万円の利益を出せていたのですが、4年目で利益どころか-1000万円になってしまいました。
この時に保険金を解約します。保険金は944万円が出ます。けど赤字の1000万円と相殺しても会社の利益は0円に。したがって法人税も0円になります。
これはお得ですね。
保険を解約するタイミングは会社が赤字のときだったらいい感じになるんだと思います。
というか利益が出てる時に解約して保険金受け取るのはやっちゃダメってことっすね。
保険により毎年現金を失う恐怖がデメリット
保険で毎年400万も使うということは、それだけ手元の現金が減ることを意味していますよね。
手元に残る資金の流れのことをキャッシュフローと呼ぶそうですが、私はよくわからない英単語は使いたくないので「手元の現金」でいいです。
たった60万円の節税のために手元の現金を400万も失くすのはちょっと気持ち悪いし不安だなぁと思って。
それなら400万を次の投資か何かに使いたい‥と思いました。
でも家族がいる場合は、社長が死んだら死亡保険2億が出るというのも魅力‥迷いますね。


